遺言執行者を指定する際の注意点
前回は「遺言執行者は必要か?」というテーマについて解説しました。今回はその続きとして、
実際に遺言で遺言執行者を指定する際の注意点について、解説いたします。
遺言執行者を定めることには多くのメリットがありますが、選び方や記載方法を誤ると、かえって手続が複雑化したり、遺言が正しく執行されない可能性があります。円滑な相続のためには、遺言書の段階でしっかりとした準備が必要です。
遺言執行者の氏名・住所を正確に記載する
遺言執行者を指定する場合、個人を特定できる情報を正確に記載することが必須です。
- 氏名
- 住所
- 生年月日(可能であれば)
といった情報を記載しておくと、相続手続の際に本人確認がスムーズに行えます。
●「長男を遺言執行者とする」では不十分
家族内で “誰のことか分かる” つもりでも、法的書面としては曖昧であり、後の手続に支障が出ることがあります。
必ず、個人を特定できる具体的な記載が必要です。
遺言執行者の辞退や死亡に備えておく
遺言執行者に指名した人が、実際の相続時に
- 先に亡くなっている
- 高齢で対応できない
- 病気や多忙のため辞退する
といったケースは珍しくありません。
●予備の遺言執行者(補充者)を指定する
遺言書では、次のように“予備の遺言執行者”を指定することができます。
「遺言執行者を○○と定める。○○が遺言執行者となれない場合は、△△を遺言執行者とする。」
こうしておくことで、相続時の混乱や遅延を防ぐことができます。
複数人を指定する場合は役割を明確に
遺言執行者は 原則1人が望ましい とされていますが、事情により複数名を指定する方もいます。
ただし、複数人を指定する場合には、
- 各自の役割
- 意思決定の方法
- 責任の範囲
を明確にしておかないと、かえってトラブルの元になります。
例:不動産関係はA、金融資産はBという明確な分担
このように役割分担が整理されていれば、執行がスムーズに進みます。
一方、「二人で協力して行う」とだけ記している場合は、解釈の違いで行き詰まる可能性があります。
遺言執行者の負担を考慮する
遺言執行者に任される仕事は、想像以上に重いものです。
- 相続財産の調査
- 銀行や法務局などでの各種手続
- 相続人への説明・連絡
- 財産の分配
- 領収書や資料の保管
特に不動産が複数ある場合や、相続人が多い場合、執行者の負担は非常に大きくなります。
●高齢の親族や負担が大きい人を選ぶのは要注意
善意で引き受けてくれるとしても、実務的に無理がある場合があります。
負担に耐えられる人物かどうか、事前に相談しておくことが重要です。
遺留分や法律に反する内容は執行者でも実現できない
遺言執行者を指定したとしても、
法的に実現不可能な内容は執行できません。
例として、
- 相続人の遺留分を侵害している
- 法律に反する条件付きの遺贈
- 実現不可能な命令(過度な義務付けなど)
このような項目を書いてしまうと、執行者が手続きを進められず、結果として遺言が十分に実現されない事態が起こります。
●専門家が関与することで実現可能性が高まる
遺言の条項は、法的に有効か、将来確実に実行できるかを慎重に確認しなければなりません。
事前に行政書士などの専門家に相談することで、「実現できる遺言書」に仕上げることができます。
遺言執行者への報酬を明確にする
遺言執行者は無償でも引き受けられますが、
財産の多い相続や複雑な内容であれば、報酬を明記しておくと安心です。
●具体的な金額または算定方法を記載
- 「遺言執行者の報酬として○○円を支払う」
- 「相続財産の○%を報酬とする」
曖昧なままにしておくと、相続人間で「多い・少ない」といった争いの原因になります。
専門家を遺言執行者に選ぶメリット
親族を遺言執行者にする場合、メリットもありますが、感情的な対立が強い家庭では非常に難しいことがあります。
そのため、行政書士などの専門家を遺言執行者として指定するケースも増えています。
●専門家を選ぶメリット
- 手続に精通している
- 中立的な立場で進められる
- 相続人間の調整もスムーズ
- 円滑で迅速な相続が実現
特に、不動産・複数の相続人・前婚の子どもがいる場合など、複雑な相続には非常に有効です。
遺言執行者の指定は「慎重に」
遺言で遺言執行者を定めることは、相続を円滑に進めるために非常に有効です。
しかし、
- 誰を選ぶのか
- どのように記載するのか
- 負担をどう配慮するのか
- 法的に実現可能な内容か
これらに注意しなければ、遺言の効果が十分に発揮されないこともあります。
当事務所では、遺言書の作成支援はもちろん、遺言執行者としての業務も承っております。
「誰を遺言執行者にすべきか迷っている」「遺言書を法的に整えたい」など、お気軽にご相談ください。
