相続財産の調査
相続人が確定したら、次に必ず行うべき重要なステップが 「相続財産の調査」 です。財産と言うと
“プラスの資産”を想像されがちですが、相続では 借金などのマイナスの財産も含めてすべて承継する ことになります。
そのため、「相続すべきか」「相続放棄すべきか」を判断するためにも、遺産の全体像を正確に把握することが不可欠です。今回は、どのような財産を調べるべきか、どのように調査を進めるのが効率的かを整理しながら解説します。
なぜ相続財産の調査が必要なのか
相続では、遺産の種類ごとに手続き方法が異なり、また相続税の対象となる資産かどうかも判断基準が変わります。さらに、相続放棄の期限(原則3か月以内)を考えると、“とりあえず相続する”という選択を安易にしてしまうのは危険です。
調査が甘いと起きるトラブル例
- 後から借金が見つかり、相続放棄の期限を超えていた
- 不動産の所在地が分からず、登記手続きが止まる
- 隠れた証券口座や保険があり、分割協議がやり直しになる
- 名義変更の際に「必要書類が足りない」と言われて時間がかかる
こうしたトラブルを防ぐためにも、財産調査は相続手続きの中でも特に重要な工程です。
相続財産に何が含まれるもの
相続財産は、大きく プラスの財産(資産) と マイナスの財産(負債) に分かれます。どちらも漏れなく把握する必要があります。
◆プラスの財産(資産)
以下は一般的な項目です。
●預貯金
銀行・信用金庫・ゆうちょなど。通帳だけでなくネット銀行や定期預金、証書類の有無も確認します。
●不動産
- 建物
- 土地
- 賃貸物件
- 山林・農地
固定資産税通知書や不動産登記事項証明書で確認できます。
●株式・投資信託・証券口座
証券会社からの報告書、郵送物などを確認します。
●生命保険金
受取人が相続人とは限りません。契約内容や保険の種類で取扱いが異なります。
●自動車・貴金属・美術品
名義や価値の有無を確認します。
●その他の財産
- 貸付金
- ゴルフ会員権
- 仮想通貨
- 未収金
見落としがちな財産も多いため、書類・通帳・PCデータなどを幅広く確認しましょう。
◆マイナスの財産(負債)
相続では、負債も承継の対象です。
●借入金(銀行・消費者金融など)
カードローンやクレジットのキャッシングも含みます。
●クレジットカードの未払金
●税金の未納(固定資産税・住民税など)
●医療費・介護費の未払い
●連帯保証債務
最も見落としやすい項目のひとつです。相続人が知らない保証契約が発覚することもあります。
財産調査を進める際のポイント
①郵便物・通帳・ファイルをすべてチェック
相続財産は“書類の手がかり”が最も重要です。
特に、
- 銀行からの通知
- 保険会社からの封筒
- 証券会社の取引報告書
- 税務署・市役所からの通知
は必ず確認してください。
②不動産は固定資産税納税通知書から調べる
毎年5~6月頃に届く通知書には、不動産の所在地や評価額が記載されています。不動産が複数ある場合の手掛かりになります。
③口座が分からない場合は「残高証明」請求も可能
銀行名が分からない場合は、給与振込銀行や公共料金の引落口座などから推測できます。
④負債の確認も忘れずに
借金は「借りた側が黙っていれば気づかれない」ケースも多いため、
- クレジットカード
- ローン明細
- 郵便物
の精査が重要です。
⑤相続放棄の期限(3か月)に注意
専門家に依頼する場合
相続財産の調査は行政書士などに依頼することができ、次の作業を専門家に代行してもらえます。
- 銀行・証券会社への照会
- 不動産の登記情報取得
- 保険契約内容の確認
- 財産目録の作成
- 相続放棄や限定承認手続きの相談窓口
- 税務上の評価額計算(税理士)
特に「故人の財産がどこにあるのか分からない」場合や、複数の銀行・複数の不動産があるケースでは、専門家のサポートが有効です。
相続の判断材料となる“財産の全体像”をつかむ
相続財産の調査は、
- 相続放棄・承認の判断
- 遺産分割協議
- 相続税の有無
など、すべての相続手続きの基盤となる重要なステップです。
「預金がいくらあるか分からない」「不動産の場所が把握できていない」といった状態では、
相続手続きは前に進みません。相続の初動として、できるだけ早く財産の調査を開始することをおすすめします。
